小さな幸せ、少しの…。

日々のつぶやきだったり、なかったり。

009 RE:CYBORG

 初めに。賛否両論でしょうね。新たなファンを増やしたいという思惑があるそうですが、内容に少々無理を感じました。それなりに楽しめる作品とは思いますが、原作の世界観を求めて観ると唖然とするかもしれません。多分。原作と原作者に敬意と愛をもっているのは伝わってきます。ただ、オリジナルを知る、オリジナルを愛してやまない立場で観ると「そんなのアリ?!」という場面が‥ジェットの鼻は普通だし、ピュンマも原作の雰囲気ないし‥流石にジョーとフランは原作、TVシリーズの流れを汲んでいますが、ほかの面々は、です。原作やTVシリーズを全く知らない人が見たら訳のわからない、なんのこっちゃな話かもしれません。まぁ、ジョーはいつでも苦悩している苦労人であるところとかは変わりませんが。現代風に作画を合わせたのかもしれませんが、オリジナルラブの立場で本音を言えばもう少し原作にキャラを近づけて欲しかった。001の超能力、002の飛行能力、003の超視覚、004の人間武器庫、005の怪力、006の火炎放射、007の変身能力、009の加速装置。あれ、008の水中活動は?003は聴覚も、だけどこれは特に描写なし。008に至っては何もなし。みんなの簡単な能力の紹介があっても良かったと思うの。でも続きが出たら絶対見に行くと思う。文句言ってもやっぱり大好きな作品だから‥ここからネタバレ。 正直な感想は。

作品と原作者に最大限の敬意をはらってプロが作った二次創作という印象でした。

そう割り切って見てしまえばそれなり楽しめます。
逆に言えば原作の設定じゃないと許せない、という場合は見ないほうが賢明かもしれません。

で、本題。

まず、メイン以外のキャラが原作から随分と雰囲気が変えられしまっている。

009、003、この二人はいいとして。

あ、004も現代風にはなってたけどあのハインリヒでしたね。

005、007はまぁ、許せるかな。

002の鼻は、鼻。あの刺さりそうな鼻がトレードマークなのに。

006、008もうまく言えないけど、変わりすぎ。

001に至っては不自然すぎる‥イワンはやっぱりゆりかごでしょう、ゆりかご。どうせならハイテクゆりかごにすればよかったのに。

時代を現代にしているので設定がある程度変わらざるを得ないのは仕方ないとして、ジョーが永遠の高校生?3年ごとに記憶を消し、高校生を繰り返す??

設定は面白いかもしれないけど無理がありすぎる。

周りの人間との関わりを考えると、ね。

作中に「27年ぶり」という言葉が出てくるけど、8回も高校生繰り返し、同じ高校や近くの高校には通えないだろうからとか考えるとかなり強引な設定だなぁ、と思うわけです。

ジェットの改造具合もやりすぎ感が‥
原作中でジェットが負傷し、あわや命を落としかける場面があり、ギルモア博士は00メンバーはロボットではなく生身も残っているサイボーグなのだから、と生身の部分もある、と強調しているシーンがあるのですが、今回のジェットは‥

ほぼロボットの体です。原作は足からのジェット噴射のみだったのにあれは‥

007と008は活躍するシーンがほとんどありません。あの赤い戦闘服に黄色のマフラー姿も作中出てきません。

あ、ジェットも着てないね。飛行するときあちこちからジェット噴射(足、肩甲骨のあたり、などなど。)してたので、ある意味真っ裸でしたね。

ある意味9人の戦士は揃いません。9人一丸となり、敵に立ち向かうようなシーンは一切なし。

今回の敵に関してもイマイチはっきりせず、モヤモヤが残ります。

GOD'S WARを意識してか、判りやすい敵は出てきません。死の武器商人が出てくるわけでもなく、キーワードは「彼の声」。(内なる声という解釈がされたけどイマイチ繋がらないんだな、これが‥)

物語終盤は原作の地下帝国ヨミ編のオマージュだろうか、核爆弾排除のため宇宙空間にやはりジョー(イワンのテレポート)とジェット(自力)が‥
しかし原作であればジョーとジェットは二人一緒に地球に落下し、ジェットはジョーに「君はどこに落ちたい?」などと聞くシーンがあるんですが、映画ではジェットがジョーをなんとか爆弾まで押し上げた後、一人で落下していきます。

ジョーとフランのラブなシーンもあるんですが(原作者もこの二人の子孫を出したりしているので公認のカップル)うーん、って気持ちが拭えない。(フランが自らあんな場所で下着姿になるなんて!)

多分映画1本に収めるには無理がありすぎたような気がする。

原作を知っていなければよくわからない部分も結構あったし‥

本当は一番違和感を覚えたのはジョーとフランを引き離していた事。原作では束の間の平和をジョーとフランは恋人同士として過ごしているエピソードが描かれている訳で。

そして彼らはサイボーグであるとともに、懸命に「人」であろうともがき、その葛藤が物語のポイントでもあり。

新しいファンがつくとこは嬉しいけれど、今回の映画が009の世界であると思っては欲しくない。

もっともっと重く、常に葛藤し、迷い、傷つきながら必死に前に進んでゆく。

原作を読むか、今まさに巨匠の遺志を継ぎ、紡ぎ出されている「conclusion GOD'S WAR」に目を通してほしい。

生粋のファンはこの「GOD'S WAR」を映画にしてもきっと見にいくよ。長い長い物語になりそうだからいくつかに分かれても観るだろうね。

パラレルとして見る分にはRE:CYBORG面白い作品でしたけど。